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春分点とマッドメン【永劫回帰か螺旋の進化か】

春分点は宇宙からのエネルギーが強まる日

春分とは太陽の通り道・黄道が南から赤道を北へ交差する日です。

占星術においてはその成立の歴史から春分点は牡羊座の0度に設定されています。

最近は太陽が牡羊座0度を通過する日を宇宙元旦と呼ぶのを見かけますが、春分点は地球ローカルな基準点なので、宇宙規模でみるシーズンの区切りという意味では少し語弊がありますね。

しかしながら、惑星がサインを移動する時期には社会的に注目される事件が起こることも多く(2001年の同時多発テロは射手座に半年ほど滞在した火星が山羊座に移動を開始した直後に起こりました)、天体(宇宙)のエネルギーを地球上の私たちが実感しやすいタイミングと言えます。

特に公転周期の長い天王星、海王星、冥王星のトランスサタニアンが春分点を移動するのは生涯が終わるまでに体験しない人も多く、今年2025年に海王星が魚座から牡羊座に移動するのは占星術的大イベントです。

終焉の魚座と新生の牡羊座、ホロスコープの螺旋構造

魚サインは海王星を支配星に持ち12星座の最後の仕上げとして牡羊座からの体験をすべて包括するサインです。

この世すべての事象を解釈することなく受け入れるので、分け隔てないと言えると同時に善悪といった分別のつかない混沌であるとも言えます。

海王星には霧散・消失という意味もありますが、人がその死に際してこの世で経験した良いことも悪いこともすべて受け入れたのちに去っていくような、魚座は人の一生に例えるならその終焉を表すサインです。

魚座の後に来るのが12星座のスタートである牡羊座ですが、魚座と牡羊座が接する春分点は混沌から無垢が、無から有が生まれる瞬間でもあり、ほかのサイン移動より春分点が特別視されるのはまさに新しい生命の始まりを感じさせるからなのでしょう。

ホロスコープは真上から見た360度の円で表されますが、春分点を通過するたびに元の環に戻るのではなく、別の新しい環に移動していて、横から見るとそれまで通過したホロスコープの環が螺旋状に重なっているイメージです。

こうして新しく生まれた牡羊座は、以前の牡羊座と同じに見えて前回12サインを1周した体験を潜在的に持っています。

ですが、今まで沢山の経験を積んでいても、牡羊座の性質はやっぱり粗忽で直情的でエネルギッシュなのに世間知らずで危うくて…

フレッシュな経験をするために、過去世での記憶や経験をいったん忘れてやり直す生まれ変わりの概念に似ていますね。

牡羊座と春分点のエネルギーを描いた?!「マッドメン」

マッドメン。無料本・試し読みあり!諸星大二郎の代表作であり異色作『マッドメン』。文明とは縁の遠いパプアニューギニアの奥地を舞台に、少数民族ガワン族の少年・コドワ…
ebookjapan.yahoo.co.jp

この春分点のエネルギーがよく感じられる物語だなぁと感じたのが諸星大二郎の「マッドメン」です。

マッドメン」はパプアニューギニアの部族の酋長の息子コドワと日本の人類学者の娘篠原波子との交流を軸に、パプアニューギニアの伝統や民俗と古代日本との共通性に着目した伝奇ロマンです。

土着の精霊信仰の文化と外部のキリスト教文化との摩擦や軋轢が繰り返される中、二人は部族神話の力を呼び覚まし、その力を持って西洋文明の侵略からパプアニューギニアの伝統を守ろうとするのですが…

物語の随所に、西洋文明に生きる人々がパプアニューギニアの人々や文化を粗野で幼稚、洗練されていないと見下す描写があるのですが、牡羊サインの欠点を指摘しているかのようです。

そんな彼らにコドワは「おまえたちがばかにしているあの小さな村の住人こそ、おまえたちの聖書がいう無原罪の人間なのだぞ!」と言い返し、ナミコは森の精霊から土より人間を直接生みだす創造の秘儀を見せられます。

パプアニューギニアの伝統的衣装や精霊たちのかぶる仮面の文様も細密に描写されていて、牡羊座のプリミティブな印象がビジュアルでも表現されています。

そしてコドワとナミコの得た神話の力とは、ある約束と引き換えなのですが、それは「閉じた環」の中で生きることなのですね。

部族神話の役割を引き継ぎ、そこから逸脱しないことで創造主の庇護を受け永遠の命を得る…

その提案もコドワは「先祖の二の舞はごめんだ! おれの神話は自分で作る!」と一蹴し、ナミコと手と手を取り合って永劫回帰の環を否定して飛び出すのがクライマックスの場面なのですが、これぞ牡羊座の象意である誕生の瞬間、春分点の通過が象徴的に描かれてると思うのです。

死と誕生の際には人は一人であるはずですが、コドワがナミコとともにあるのは、ナミコとはこれまでの12サインで経験してきたことの潜在的記憶の象徴であるかもしれません。

ナミコから見てもコドワとともに生き延びて環を超えることで、これから二人が経験する世界は永劫回帰とは異なる環なのだという証明になっています。

牡羊座は生まれたての赤ちゃんに例えられるようなサインですが、何もおぼつかない存在ではなく、もっとも可能性に満ちた存在であり、単純明快さと創成神話的属性が両立する深遠さも持つサインではないでしょうか。

ちなみに、自分の牡羊座の金星火星合のことは「コドワとナミコ」と呼んでいますがw、私の牡羊座の金星火星合はアストロマップで見ると、そのラインがパプアニューギニアを通っています(そのまんますぎる)!